音楽配信の曲目はどうあるべきか?
以前記事として書いたが、eufoniusに大きなタイアップがあった。主題歌のみならず劇伴、最終話特殊EDまでも担当し、劇伴全曲が収録されたサントラが発売された。サントラに関しては円盤特典になったり、そもそも発売されなかったりするタイトルも多い中、これはかなりの優遇であろう。ランティス様ありがとうございます。
記事の最後に追記したが、OP主題歌のハイレゾ配信があった。追記では“e-onkyo等”と書いたが、これには理由がある。配信サイトによって収録楽曲に違いがあるのだ。
この問題に関しては既に各所で指摘されているが、まずは個人的な見解を述べておこうと思う。
音楽媒体においては、収録曲、曲順、曲間全てを含めて作品であるというのが私の立場である。さらに言えば、CD盤ではケースやジャケット、ブックレット(紙、デザイン、レイアウト、印刷)をも全てを含め、受け手は作者と作品の問いに応えるべきだと考える。
当然ハイレゾ等ではケースやジャケット、ブックレットは無く、またその性質上(現状では)曲間の概念は無い。しかし、PDF等でブックレットを付属する作品は既に存在するし、媒体をUSBフラッシュメモリ等にすることもできる。曲間に関しては、cueファイルのINDEX 00で表現することが検討されても良いと思う。
さて、上記収録楽曲の違いだが、私が確認した限り、e-onkyoとgrooversではinstを含め4曲の収録があったが、それ以外の配信サイト(レコチョク、dミュージック、music.jp、mora)ではinst以外の2曲のみが収録されていた。
まずはこれら6サイトに問い合わせた。収録楽曲に違いがあることに加え、e-onkyoとgrooversのみにinstの収録があることも伝えた。
以下はお待ちかね、回答の概要である。
●e-onkyo
・レーベルより納品した音源を配信
・楽曲のファイル形式や構成など、全てレーベルの意向
●groovers
・権利保有レーベルから納品を頂いたメタデータ、音源をそのまま配信している。
・ハイレゾに限らず、各権利者の中ではCDと配信は別の商品として受け取め、形態を変更する場合がある。
・配信サイトによって商品の内容に違いを付ける場合もある。
・
・CDでは収録されている楽曲でも配信では未配信の楽曲がある。
●dミュージック
・各権利元レコード会社の許諾に基づくもの
●music.jp
・ココロニツボミについては2曲のみの配信がmusic.jpの仕様
●mora
・(回答前日に)こちらで調べたい。
・楽曲の発売元に確認した。
・現在moraではインスト版の配信は行っておらず、
非常に興味深い回答がいくつかあった。
まずはe-onkyoのファイル形式への言及。現在多くの、というか(OTOTOYとかいう良心以外の)ほぼ全ての配信サイトでは可逆形式での配信がflacのみになっている。これは日本オーディオ協会の不可解な定義によるものだと思われるが、この定義に縛られているのは配信サイトよりもレーベルなのだろうか。
grooversは、音源だけで無くメタデータをもそのまま配信しているという回答。また権利者の受け止めや配信サイトによる差違に関する認識もあるという。
レコチョクとdミュージックは提携しているようで、同一のテンプレートを用いたと思われる文章での回答だったが、レコチョクのみがCD盤との差違が存在することを認識しているということだろうか。
music.jpは問い合わせから9日後の回答となった。ポストHD-MUSICでも目指しているのだろうか? と言ってもサポート体制が悪いというわけではないようで、その文言からは返答に迷った様が見受けられ、唯一ランティスの意向だと明言しなかった。
moraは発売元(ランティスと思われる)へ問い合わせてくれたようである。いつかの対応は何だったのだろうか。しかし興味深いのが“moraでは”という文言。これはランティスからmoraへの返答通りで、かつランティスが意図して配信サイトごとの差違を生じさせているという意味なのだろうか。
というわけで、ランティスにも問い合わせた。
・社内事情により配信サイト毎にinst音源の配信が可能な場合と配信不可な場合がある。
・配信サイトの優劣は無い。
いまいちパッとしないが、各配信サイトの回答通り、少なくともアーティストやタイアップではなくランティス社内の事情に起因するものだということは分かる。
一応述べておくが、ヨスガノソラOSTとは違い、当然instの収録が無いサイトはその分値段が安い。前述した私個人の見解を誰かに押しつけるつもりは無く、ランティスの言う「配信サイトの優劣は無い」はその通りだろう。
ただしその上で、使い勝手やファイル形式(flacではエンコードレベル)等の違いとそれに対する受け手の評価はあって然るべきである。音楽を愛する人達が配信サイトを選ぶ際、これが選択の一助となれば幸いである。