あおあおみどり

Hatena Blogはじめました。

消費者が商品を愛するということ

f:id:y_kita:20180404222519p:plain

▼これは持論だが、万人の拘りは拘りに非ず、己のみの拘りこそ為す価なり。

▼つい先ほど、我が愛するDAWCakewalk SONARの復活が宣言された。実際にはCakewalkという旧名に戻った訳だが、先日SONARユーザーにはアカウント情報移行のアナウンスがなされ、既にアカウントの紐付けがされていた。

 早速ダウンロード、インストールして使ってみたところ、おおよその機能は維持しているようである。特にAdaptive Limiter(ISP検出、キャラクター選択、ディザーシミュレーション、MP3圧縮シミュレーション等を備えた高機能リミッタ/マキシマイザ)、オーディオクリップをInstトラックに読ませると自動的にMIDI変換してくれるMelodyneARAとの連携、Roland A-PROシリーズとの連携が維持されたことは非常に嬉しい。これからも使い続けようと思う。

 

▼ただし一つだけ、引っかかることがある。この新生「Cakewalk by BandLab」、フリーソフトなのである。

  わざと引っかかる言い方をした。もちろんフリーソフトが全て悪いと言うわけでは無いが、DTMユーザーにとってこれは危険信号だ。

▼まず、フリーソフトには、安定性と信頼性という、創作ソフトウェアに欠かせない二要素が欠けている例が散見されること。DAWに限らず、プラグインにおいても、安定性の観点からシェアウェアで統一すべきという意見もある。

 特にSONARは落ちやすいと散々言われ、メジャーアップデート発表会で当時親会社だったRolandV-Vocalごと落ちる等の伝説を残した末、SONAR Platinum以降の料金体系に移行、安定性を手に入れたという経緯がある。

 ただし、今回この件に関しては心配に及ばないだろう。BandLabはすでに同名のソフトウェアをフリーで開発しており、安定性の悪評は見受けられないからだ。

 

▼そして次に、ようやっと本題だが、使い手とソフトウェアの心理的な距離が離れてしまう懸念を挙げたい。

 個人経営の通販ショップから手作りの商品を購入したら、手書きの手紙に「お買い上げありがとうございます」。思わず心が温かくなる。そんな経験は無いだろうか。

 どんな商品でもそうだが、取り分けソフトウェアはこういった感情が重要だと考える。インターネットを介し、そして形が無いからだ。

 異常に対応が早いxrecode3、故郷の写真を送ると喜んでくれるExact Audio Copy、異様に長いマニュアルに彼女募集中とか書いちゃうBug head等、機能性以外でも愛すべきソフトウェアは数多く存在する(ここに挙げたものは機能性も優れているが)。

 SONARにおいても公式フォーラムには独特の暖かさがあり、(FL Studio程では無いにせよ)最高技術責任者のノエル氏を始め、開発陣が愛されたソフトウェアだった。先日のGibsonによる一方的なSONAR開発終了の発表後に起こった元社員を名乗る暴露にもそれは表れていた。

 

▼懸念は三点。

 一点。フリーウェアにあるまじき機能性に飛びついた多すぎるユーザーの声

 一点。BandLabとのユーザー層の違いによる開発の方向性の誤り

 一点。ボストンに置き去りにした開発陣と情熱

 シェアウェアDAWにさえ無い機能(ProChannel等)とStudioOne最高位と一致すると言われるオーディオエンジンを兼ね備えたDAWである。DAWが何かも知らないで手を出すユーザーが増えるだろうことは想像に難くない。開発にはノエル氏が関わるということなので、どうか買収発表以降の旧ユーザーを重視する姿勢を貫いて欲しい。彼らは有料でも払いうる消費者である。

 従来のBandLabユーザーの流入も考えられる。これに関しては正直あまり詳しくないが、旧SONARユーザーとの差違が明らかになった際、うまく棲み分けが図れるかはソフトウェアの命運を分ける。

 先述の暴露より、

Challenging, exciting, fun. Long. I would do it all again. Working on something you care about with customers that youve talked with and share a passion about something with is amazing.

 新開発陣の皆さん、これまでCakewalkが培ったものを見誤らずに、さらにBandLabの技術力で、これからも変わらぬ愛をどうか。

 

▼あ、あと、日本語に対応していただけると嬉しいです。